一分……二分……三分……。
彼はそろそろと両膝を突いて、草の中から起き上った。そして怖じた兎のように眼を剥いて恐る恐る周囲を見まわした。
月が照っている。窓々の硝子は光り、樹々が眠っている。しんかんとした夜の空気……。
「これが?」
彼は肩を窄めて、
「これが? これが死? これが? これが?」
痩せた顳顬をヒクヒクと痙攣させながら、彼はまたのび上って、そろそろとあたりを見まわした。
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美しき月夜
宮本百合子
一分……二分……三分……。
彼はそろそろと両膝を突いて、草の中から起き上った。そして怖じた兎のように眼を剥いて恐る恐る周囲を見まわした。
月が照っている。窓々の硝子は光り、樹々が眠っている。しんかんとした夜の空気……。
「これが?」
彼は肩を窄めて、
「これが? これが死? これが? これが?」
痩せた顳顬をヒクヒクと痙攣させながら、彼はまたのび上って、そろそろとあたりを見まわした。