「それはどうにかなりませうよ。」
虹猫はそつとマンドリンをかき鳴らしながら考へてゐると、突然、大女は気がつきました。
「爺さんは、音楽が好きなんですよ。仕事をするのに大へん助けになるからですつて。だからもし、あなたが外を流してあるく旅音楽師の真似をなすつたら……」
虹猫はよろこんで、とび上りました。
「そこだ。それぢや、あなた孔雀の羽を一本僕にかしてくれませんか。」
大女はすぐ孔雀の羽をもつて来ました。
「どうもありがたう。これであなたは一時間たつたら、自由なからだになりませう。まづそれまで、しばらくさやうなら。」と、言つたかと思ふと、虹猫はひらりと身がるに窓からとび下りました。
それから、すつかり外套を着こみ、帽子を目深にかぶり、孔雀の羽を帽子の前の方にさしました。
「どうです。これですつかり旅の音楽師でせう。」と言つて、虹猫は大胆に魔法つかひのゐる塔へ行つて呼鈴をひきました。
魔法つかひは自分で戸口に迎ひに出て来ました。けれども、ほんの僅かばかりしか戸を開けません。
「おまへは誰だ。何の用があつて来たんだ。」
「僕は旅の音楽師です。内にはいつて、一曲ひいてはいけませんか。」
魔法つかひはうさん臭さうな目つきをして、「何だおまへ、その袋の中に入れてるものは。」と、きゝながら、足で袋をけりましたから、なかの稲妻が、ガラガラツと大きな音を立てました。
「これですか。」と、虹猫はそ知らぬ顔で答へました。
「これは珍らしい楽器です。だからあんな音を出します。これがなけりや、僕は歌がうたへません。」
「うん、さうか。ぢや一つそこでうたつてごらん。その上で中へ入れるか入れないか、きめるから。」
虹猫はマンドリンをかき鳴らしてうたひました。
青い草の上に、鵞鳥が一羽、
くちばしが金で羽が銀、こんな美しい鳥は、
誰もまだ見たことがない。
「うん、面白さうだ、うちにはいつて、あとをうたひなさい。」魔法つかひは、よろこんでうちへ虹猫を入れました。しめたツと、虹猫はいきなり袋をあけて、稲妻をはなしました。ピカ/\、ゴロ/\、大したさわぎです。虹猫は外套をぬぎすて、テイブルの上にとびあがつて、青い目を光らして、フツ/\ニヤオ、ニヤオと叫び立てました。魔法つかひはすつかり閉口して桑原々々とふるへ上つてゐるのを、虹猫は手足をしばつて、袋の中に押込み、そこにあつた魔術の本はみんな火にくべて、焼いてしまひました。魔法つかひはその後、悪いことをしないやうに遠くの国へ追ひやられ、大女は自分の国へ、子供たちはめい/\親のところへ帰りました。