二
ある日もまた、皆でその遊びに夢中になっていますと、山の方からさっと風が吹いてきて、青い空にゆるく立ち昇っていたたき火の煙が、ゆらゆらと乱れかけるとたんに、高い所で、アハハハ……と大きな笑い声がしました。子供達はびっくりして、歌も踊りも止めて見上げますと、髪の毛のまっ白な白髭の大きなお爺さんが、煙の中にぼんやり浮き出して、にこにこ笑っています。おや! と思うまに、お爺さんの姿はすーっと消えてしまいました。
皆は夢でもみたような気がしました。けれども、とにかくお爺さんの姿が煙の中に実際見えたのです。一寸法師の子僧ではなくて人の何倍もある大きな白髪白髭のお爺さんでしたけれど、ちっとも恐くないやさしい顔つきで笑っていたのです。
子供達はそれに元気づきました。そしてやはり毎日のようにそこへ来て、たき火をして遊びました。すると、必ず一度は煙の中に、お爺さんの笑い声が聞こえて姿が見えました。けれどそれはいつも、ほんのちょっとの間だけでした。
「あのお爺さんを煙の中から呼び出して、一緒に遊んでみたいなあ!」と皆は思いました。
そしていろいろ知恵をしぼって、お爺さんを呼び出す手筈をきめました。
そこで、その日はいつもよりたくさんに枯枝や落葉を拾ってきて、中には生木の枝までも交えて、煙が多く出るようにしました。皆はそれに火をつけてから、歌をうたい踊りをおどりながら、煙の中をじっと横目で見つめていました。やがていつもの通り、山の方からさっと風が吹いてきて、濃い煙がゆらゆらと横倒しに動くとたん、アハハハハハという高笑いと一緒に、お爺さんの姿がはっきり煙の中に現われました。そらッ! というので、みんなは立ち止まって、中の一人が話しかけました。
「お爺さんはどこから来たの?」
もう消えかけていたお爺さんの姿が、またにわかにはっきりしてきて、やさしい声で返事をしました。
「わしは山から来たのだ」
すると、待ち構えた次の子供が言いました。
「お爺さん、煙の中から出て来てくれない? 一緒に遊ぼうよ」
「そうさね」とお爺さんはちょっと考えるようなきつい顔つきをしました。「いや、まあ止そうよ。わしは山の爺さんで、お前たちと一緒に遊ぶと、お前達が風邪をひくかも知れないのだ」
すると今度は、三番目の子供が言いました。
「お爺さん、僕達が火を燃やしてる間は煙の中に残っていてくれない? それともお爺さんは僕達が恐いの?」
「アハハハハハ」とお爺さんは笑いました。「何とかかとか言って、わしを引きとめるつもりだな。だがわしは、いつまでも一つの所にじっとして居れないのだ。そんなにわしを引きとめておきたいなら、わしを捕まえてごらん。明日、わしはお前達のたき火の煙の中にいて、姿を見せないから、そのわしを捕まえてごらん。みごと捕まったら、ごほうびを上げる」
そう言うかと思うと、お爺さんの姿はもう消えてしまいました。
子供達は当が外れて、しばらくぼんやりしていましたが、やがてお爺さんの約束を思い出して、また元気づきました。そしてお爺さんを捕まえてやろうと決心しました。
それは容易なことではありませんでした。煙の中にいる姿の見えない人を捕まえるのですから、それこそまったく雲をつかむようなものでした。皆でいろいろ相談したが、よい工夫もつきませんでした。そのうちに、ある一人がふとおもしろいことを考えついて、それを皆に話しますと、皆は手を叩いて喜びました。それならきっと捕まえられると思いました。